Invisible environment
Invitation card
Collection 010 / SS 2022
amachi. by Amachi Yoshimoto × Hisae Higuchi
Invisible environment
乾いた大地
見えない水脈
amachi.のデザイナー吉本天地から10シーズン目のコレクションとなる2022ssのテーマを聞いて、
ふと頭を過ぎったのがドイツ人作家Susanne Krauseの創作した紙だった。
和紙の揉み紙のようにシワ加工が施された紙には、抽象画のような魅力があって、
額装して飾るのも良いかもしれないと大切にしまっていたが、
引き出しから取り出して陽の光にかざしてみると、一面にひび割れた「大地」が現れた。
本と洋服。
互いの創造の場をつないで、新たな創作へ挑戦してみよう。
そのはじめの一歩となったのが今回のCollectionのInvitation cardだ。
厚さわずか数ミリの紙の中に、地下に流れる水の存在を感じさせるにはどうしたらよいか。
デザイナー吉本天地の生まれ故郷、北カルフォルニアの大地へと思いを馳せながら、
インクの色、活版の押し具合、紙の厚みを吟味する。
植物や石、ファウンドオブジェを使ったインスタレーションが印象的なamachi.のクリエーション。
地下水脈のように流れる記憶のカケラが、さまざまな素材の断片と出会って、
新たな景色として追体験される。
amachi.の創作活動は、「自然−都会」という空間の隔たりだけでなく、
「過去−現在」という時間の経過も折りたたんで、「今・ここ」に持ってきてしまう。
仕上がったカードをルーペで覗いてみると、
望遠鏡を通して見知らぬ土地を眺めるような、
あるいは顕微鏡で土の中の微生物を観察するような、
ある種の冒険心がくすぐられた。
“はたしてぼくらは、
人間そのものを批判するにあたっても、
宇宙的な尺度をもって、
科学者が拡大鏡をとおしてみるように、
機上の窓ごしに、
見るように変ってきた。”
− サン=テグジュペリ 『人間の土地』 より
飛行機が、地上を見渡す「視点」を人間に与えたのと同じように、
時間と空間の隔たりが「フィルター」となって、
記憶の彼方にある大自然が、色や形、手触りとして呼び起こされる。
一人のデザイナーが生きているかぎり上映されるこの美しい映画は、
今まさに始まったばかりだ。
© amachi.